家具バイヤーの岡田です。
前回のエッセイで、「原点回帰」をテーマに掲げ、インドネシアに長期買い付け出張に出向いたお話をしましたが、果たして、どんなものを買い付けてきたのか…?
早くも11月下旬には、新商品として店頭にてご覧いただけそうなのですが、一足お先に商品の一部を、現地エピソードとともにご紹介したいと思います。
今回の買い付けターゲットの一つは、アジアンアンティーク家具。
ちなみに、欧米では、100年以上経過したものをアンティークと定めていますが、インドネシアではしっかりした定義はなく、おおよそ80年以上経過したものをアンティークと呼んでいます。
創業当初の吉祥寺店では、アジアンアンティークとそれ以外の一点ものの家具を3対7の割合で扱っていました。
前回のエッセイでもご紹介したように、最近は、量産できる新しいスタイルの家具の開発に力を入れていたので、アンティークの買い付けになかなか時間を取れず、各店舗ともに扱いが少なくなっていました。
もう一度、原点に立ち戻り、インテリアのレベルをぐっと引き上げてくれるKAJAらしいアンティーク家具を丁寧に買い付けてみよう。
それが、今回の出張の大きな目的の一つです。
さて、アンティーク家具に照準を合わせた買い付けは久しぶりです。
訪ねたのはジャワ島の小さなアンティークショップや、家具工房を兼ねた古材屋など。
島内を2週間駆け巡り、20軒ほどのショップを一軒一軒、時間をかけて見て回りました。
2週間で20軒だけ? と思われるかもしれませんが、東西に長いジャワ島は、関東から九州くらいの距離があり、次の訪問先まで車で5時間かかる…なんていうことも。
ここ最近は、職人さん100人規模のメーカーの開放的な工房を訪ねる機会が多かったせいでしょうか。
限られたスペースに、時の経過を感じさせる家具がひしめくアンティークショップ独特の雰囲気に、自然と胸が高鳴ります。
最近、他のバイヤーに見せたであろう商品以外はたっぷりと埃をまとっていて、綺麗に払わないと買い付けの判断ができないようなものばかり。(笑)
まさに、おばあちゃんの家の蔵に眠る宝探しをするような感覚です。
今では手に入れることができない本チークに、さまざまな模様の美しいレリーフが彫り込まれた家具たち。
デコラティブなもの、重厚感たっぷりのもの。
じっくりと時を重ねたアンティークしか持ち得ない落ち着きのある佇まいが美しく、どれも素敵に見えてきてしまうから危険です。
でも、ここで頭をくるりとひと回転。
“KAJAらしいアンティーク家具を探す”その言葉とともに気持ちを切り換えます。
インテリアのアクセントになる存在感は欲しいのですが、あまりにもデコラティブで主張しすぎる家具は、KAJAらしくありません。
レリーフは控えめに、でもインドネシアの職人の技術力がにじみ出る、品の良い一品を。
そんな家具を埃まみれの空間から根気よく探って行きます。
そしてついに「これだ!」 という一品に出会いました。
シンプルでありながら存在感のあるキャビネット。
扉は贅沢にも本チークの一枚板。
日本の住宅環境にちょうどよく収まるサイズ感で、状態もとても良いです。
扉の鍵がすっぽり取り外されていたので、新しい鍵をつけてもらいました。
あとは、日本に到着してから表面をサンディングしたり、オイル塗布して状態を見ます。
幸運なことに、その後はキャビネット以外にも、次々とKAJAスタイルにふさわしいアンティーク家具に出会うことができました。
こちらのサイドテーブルも、若干のメンテナンスは必要ですが、デザインがユニークですし、造りがしっかりしていてなかなか良い品です。
家具だけでなく、インテリアの雰囲気をぐっと高めてくれそうなアンティークの小物類もたくさん買い付けてきました。
とても美しいフォルムの本チークの壺。
さりげなく棚の上に置くだけでも、絵になります。
これは、鍵付きのジュエリーボックス。
細やかなレリーフが彫られたものからシンプルなものまで、いくつか買い付けてきました。
お客さまのお部屋の雰囲気に合わせて選んでいただけそうです。
こちらは、2枚の板からなる、折りたたみ式のコーランの書見台。
使われていた当初の彩りがほんのり残っています。
ジャワ島では多くの人が敬虔なイスラム教信者なので、昔から神聖なコーランを読む時は、専用の台を使うことが多かったようです。
日本の日常では見られない小物ですね。
こうした現地ならではのストーリーをご紹介できるのも、アンティークの魅力。
異国のストーリーと合わせて、アンティークの佇まいを楽しんでいただきたいです。
今回の出張では、ここでご紹介した以外にも、たくさんのアンティーク家具、小物を買い付けることができ、実はとても驚いています。
というのも、行った先々でここまでアンティークの品々が充実していることは、滅多にないからです。
タイミングを間違えると、他のバイヤーにごっそりと買い占められた後…なんていうこともよくある話。
特に、アジアンアンティークを好んで買い付けるオーストラリア人のバイヤーは、リゾートホテルのオープンなど、ビッグプロジェクトを抱えていることが多く、買い付ける量が半端ではないのです。
そんな状況下で、タイミング良く、そして満足のいく買い付けができたのは、KAJAの現地スタッフの周到なリサーチと事前手配のおかげです。
KAJA現地スタッフのリザ&アンディ(いつもこちらの要望を理解し、周到な現地手配をしてくれる)
さて、次回のエッセイも、インドネシアの買い付け出張レポートが続きます。
リデザイン家具のオーダーについてのお話です。
アンティーク家具より、さらにディープなショップでの買い付けをレポートします。
どうぞお楽しみに!