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コラム
2020.05.30

バティック一枚に注ぎ込まれた職人たちの技

吉祥寺本店に勤務するスタイリストの榎本です。

前回に引き続き、インドネシアの伝統的な染め布地として知られるろうけつ染め「バティック」の魅力をお伝えするのとともに、現地の染色工房で手描きのろうけつ染め体験をした時に感じたことをお話ししたいと思います。

アジアン家具KAJAバティック工房の様子

バティックは、ろうけつ染めという伝統的染色方法で図柄を表現した布地であることを、前回のエッセイでお伝えしました。

何よりも、インドネシアの美意識が表現された模様がバティックの魅力ですが、一枚の染め布からどれほどの時間と手間をかけて作られているのか想像するのは、なかなか難しいことです。

そこで、私自身がその製作過程を体験することで、バティックのさらなる魅力をお客様にお伝えできるのではないかと考えました。

細やかな美しい模様と品質の高さから、“ジャワ更紗”とも呼ばれるバティックの特産地、ジャワ島の工房を訪ねました。

アジアン家具KAJA美しい手書きのバティック

訪れたのは、“ジャワ更紗”の工房が点在するエリア。

工房によって描かれる模様が異なり、オリジナリティの高いバティックに出会うことができます。

ろうけつ染めの製作体験を受け入れてくれたのは、以前から取り引きをしていた、ろうけつ染め工房。

1階の店舗に展示された商品を見渡していると、やはり手描きのバティックに惹きつけられます。

動植物、瞳、手のひらなど、宗教柄大切にされているものや、守護、魔除けの意味を成す図柄が多く見られ、エネルギーに満ちています。

中でも、伝統的な絵柄が描かれたアンティークのバティックは、何か心の内にずしんと響くものがあり、歴史の重みを感じました。

洗練されたインドネシアの美に圧倒されつつ、ろうけつ染め体験への期待が一層高まります。

アジアン家具KAJAバティックの製作途中

2階へ向かう階段を上がると、急に現地感が出てきます。

制服を着た若い女性スタッフが、こそこそとおしゃべりしながら、ろうで絵を描いていました。

この2階の工房では、下書きした木綿や絹の生地にチャンチンという道具で線にロウ伏せし、染色し、ロウ落としを行います。

そして、その同じ工程を色の数だけ行い、水洗いを繰り返し、バティックを完成させるのです。

アジアン家具KAJAバティック工房の女性たち

今回私が体験するのは工程のほんの一部。

50cm×50cmの大きさの木綿生地に下書きした線を、ロウでなぞっていくロウ伏せの作業です。

チャンチンを受け取り、いよいよ手描きろうけつ染め体験のスタートです。

チャンチンの大きさは、手の平くらいでしょうか。

小さなカップ状のところにロウを入れると、先端の細い部分からロウが出る仕組みです。

チャンティンは持ち手が木、ろうを入れる先端は真鍮です。

持ち手の木の長さは10cmくらいで、女性がつかみやすい細さ。

真鍮からは極細の管が3本ほど出ています。

目の前には熱せられたロウがぐらぐらと煮立っている鍋が!

ここにチャンチンをサッと差し込み、ロウをすくい入れるのですが…。

アジアン家具KAJAバティック描き体験

ここで、早くも問題が。

ロウをすくい取りたいのに、とにかく熱い!

なかなか手が出せないのです。

でも、ロウを入れないことには何も始まりません。

なんとか熱さに耐え、チャンチンにロウを入れることに成功。

ようやく布の下書きをなぞる作業に取り掛かります。

アジアン家具KAJAバティック描き体験中

片手にチャンチン、反対の手には、丸い枠で挟んでピンと張った布。

注意深く、チャンチンからロウを落とすのですが、思い通りにロウで線を引くことができません。

下書きをなぞるだけなのに!

チャンチンから落ちるロウと布の角度が、どうにも噛み合わず、下書きの線上にうまくロウが落ちてくれないのです。

結果、下書き以外のところにロウがポタポタと垂れてしまい、意図せず水玉模様になってしまいました!

見兼ねた現地のスタッフが布に手を添えて、布の角度をコントロール。

二人三脚のロウ伏せ作業となりました。

そうして、ロウと格闘すること15分。

どうにか下書きをなぞり終えることができました。(大胆な水玉模様が入りですが…)

アジアン家具KAJAバティック描き体験の難しさ

かたや、私の横では、ロウの熱さをものともせずチャンチンを自由に操る女性たちが。すらすらと図柄を描いていきます。

ロウの粘着力、生地に落とす量、線を引くスピードを感覚的に覚えている手元が生む美しい線。

このロウ伏せの作業が終わると、次の職人の手に渡り、塗り、そして洗いが繰り返され、ようやく美しいバティックが完成するのです。

アジアン家具KAJAバティック職人作業

アジアン家具KAJAバティック職人作業中

今回、製作の一部を体験し、さらには全工程を目の当たりにすることで、

“多くの職人の技術と根気のリレーが一枚の美しい染め布を作り上げている。

そのストーリーこそが、バティックの真の魅力なのではないか”

そんな思いがふつふつと湧いてきました。

ほんのひと時の体験でしたが、風に揺れる布を見つめる職人たちと、同じ風を感じられた気がします。

バティックは、絵柄、色、ともにバラエティに富み、眺めているだけでもハッピーな気持ちになりますので、ぜひ、お気に入りの一枚を探してみてください。

アジアン家具KAJAバティックを使ったインテリア

アジアン家具KAJAバティックを使ったインテリアコーディネート

さて、次回の買い付けエッセイは、新作登場MUSCA(ムスカ)シリーズのウッドレリーフ家具についてお届けします。

お楽しみに。


2020.05.30 12:02 DIARY

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