こんにちは。
雑貨バイヤーの和田です。
新型コロナ感染拡大の影響で、家具と同じように雑貨においても、リモートでの買付けが続いています。
今回は、現地スタッフの協力を得ながら先日リピートオーダーした、アタ素材で作られた雑貨の魅力と、その歴史についてご紹介します。
アタ製品は、バリ島などのインドネシアにしか自生しない、「アタ」というシダ植物を乾燥させ、それを割いて編み込んだものです。
しっかりとした編目には、自然素材ならではの色味の強弱が繊細に浮かび上がり、バスケット、ティッシュケース、収納ボックスなど、どんなデザインに形成されても、ナチュラルさと品の良さを兼ね備えた一品に仕上がります。
アタ製品が醸す独特の雰囲気は、モダン、カジュアル、さらには和のスタイルにまでも溶け込んでしまうので、オールラウンダーのインテリアアイテムと言ってもいいかもしれません。
今や世界中で愛されているアタ製品ですが、その誕生について触れてみたいと思います。
発祥の地と言われているのが、今もアタ製品の産地として知られるバリ島のトゥガナン村。
16世紀、イスラム勢力から逃れるようにしてジャワ島のマジャパイ王国の人々が続々とバリ島に移り住み、彼らによってジャワ・ヒンドゥー文化がバリ島に伝えられました。
その当時伝えられた宗教や文化が、現在のジャワ島の暮らしのベースとなっています。
ところが、実は16世紀以前に、すでにバリ島にはジャワ島からヒンドゥー文化が伝えられていたのだそう。
古くに伝えられたその文化を守ってきたのが、「バリアガ」と呼ばれる人々です。
バリアガとは、外国のバリ島文化の研究者が、研究上の名称として名づけたもの。
アタ製品の産地として知られるトゥガナン村も、バリアガが住む村の一つです。
トゥガナン村には、今も独特の文化とコミュニティが色濃く残っています。
その一つに、古より途絶えることなく行われてきた儀礼があります。
実はそこで行われる儀式の形式から、トゥガナン村が古くからアタ素材と親しんできたことをうかがい知ることができるのです。
毎月行われる儀礼のうち、「ウサバ サンバ」という1ヶ月以上続く大きな祭礼があります。
その祭礼のクライマックスに「ムカレカレ」という儀式があり、パンダン・ドゥリという刺のあるパンダンの葉の剣と、アタでできた盾を持った男性たちが戦います。
この盾こそが、アタ製品の始まりと言われているのです。
トゥガナン村では、アタ製品と同じように、宗教的文化から発展した伝統産業があります。
魔除けの布として知られるグリンシン(縦横絣またはダブルイカット)も、この村の特産品です。
独特の模様を味わい深い彩りで浮かび上がらせたグリンシンは、タペストリーなどインテリアのアクセントとして人気があります。
コンパクトな織り機を使って、代々伝わる模様を手作業で織っていきます。
残念ながらKAJAではグリンシンの扱いはありませんが、古くからの技術が継承されているトゥガナン村のものづくりを、バイヤーとして今後も注目していきたいと思います。
さて、一方のアタ製品づくりも全ての工程が人の手によるもの。
昔から伝わる手法をもとに、今も職人たちが手作業でアタを編んでいます。
アタは栽培が難しく、自生しているものを採取します。
長いものになると、高さ6mにも成長するのだとか。
採取したものを乾燥させたら、茎の部分を4~8等分に裂いてひも状にします。
それを同じ大きさの穴に通して、太さを均一にします。とにかく手間のかかる作業です。
茎の部分を乾燥させるとナチュラルな茶色になり、根の部分は黒くなります。
茶色の茎の部分が製品を形成するメインの素材となり、黒い根の部分はアクセントとなるモチーフの編み込みに活用します。
デザインに合わせて、黙々と手編みで形成していきます。
丁寧にひと編み、ひと編み進めていくため、とても時間のかかる作業です。
例えばティッシュケースを一つ編み上げるだけでも、3日はかかります。
それぞれの形に編み上げたら、バリ島の強い日差しの下、5日間ほど日干しをします。
ただし、雨季に作業する場合、さらに日数をかけて乾燥させなければなりません。
天候に合わせて十分乾燥させたら、窯に入れてココナツの実を裂いたものと木片を燃やす火を絶やすことなく、約3日間燻し続けます。
燻しムラができないよう、3時間おきに火加減を調整しなければならず、熱気に包まれながらの過酷な作業です。
全体的に燻されるよう、途中で上下左右とひっくり返します。
燻し終えると、アタの表情はすっかり様変わり。
ツヤのある優しいあめ色となり、スモークした香りがほんのり漂います。
この“燻し”の工程には、美しい仕上がりを追求するだけでなく、防虫・防カビ効果も兼ねているそうです。
最後に、煙のすすをやわらかいブラシと布でやさしくふき取り、注意深くささくれが出ているところをチェックしてカットします。
全体をきれいに整えたらようやく完成です。
アタ製品の人気は高く、最近は材料となるアタが不足することも。
特に良質なアタは、どんどん希少な材料になっています。
また細かくアタを編み上げることのできる職人も少なくなりました。
アタ職人の技術の継承に何かサポートできることはないだろうか…。
KAJAの今後の課題でもあります。
今回、リピートオーダーしたアタ製品は、KAJAの各店舗の店頭に並んでいます。
用途に合わせた様々なアタ製品を豊富に取り揃えています。
オンラインショップでもご覧いただくことができますので、興味を持たれた方は、ぜひチェックしてみてくださいね。